『発掘狂騒史 「岩宿」から「神の手」まで』 文庫解説 by 増田 俊也

書評総合



発掘狂騒史 「岩宿」から「神の手」まで (新潮文庫)

作者:上原 善広
出版社:新潮社
発売日:2017-01-28











あと2月足らずで21世紀にならんとするまさに世紀末、2000年(平成12)に、日本中を驚かせた毎日新聞の大スクープがあった。旧石器捏造事件である。本書はこの事件にまで至る日本の考古学史を追ったノンフィクションだ。
題材を聞いたとき、私は嫌な気がした。あの事件に関わって人生を棒にふった人たちの傷口に塩を塗るような内容を予想したからである。歴史的事件で大失態をおかした人物を追ったノンフィクションは、そのほとんどがスキャンダリズムに堕し、苦しむ人たちを穿鑿し、ぎりぎりまで追い詰められている人びとをさらに鞭打つ内容のものばかりである。 
しかし読みはじめてすぐにその心配は杞憂だとわかった。
あの上原善広である。『異形の日本人』(新潮新書)をはじめ、弱者の側に立ち、ともに涙を流し、血を流しながら書き続けてきた上原である。
上原善広はこのアカデミズム史上類のない大事件を、藤村新一だけの問題にはしなかった。”主役”である藤村は序章で触れられたあと200ページほどまったく登場せず、最後の最後、最終章近くになってやっと出てくるのだ。ここをピンポイントで解説しようとせず、来歴を遡って、日本の考古学界の源流、つまり藤村新一の師匠たちの人生から物語を紡ぎだす。
この書は事実を書き起こしたただの事件物ノンフィクションではない。日本考古学界の流れとあ

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