『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』人間の卑劣さと高潔さを徹底して描き出す

書評総合



いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件

作者:大崎 善生
出版社:KADOKAWA
発売日:2016-11-30












2007年8月24日、名古屋市内に在住の31歳の女性会社員、磯崎利恵さんが帰宅途中に男三人に拉致されて殺害され、岐阜県の山中に捨てられるという事件が起きた。犯人の一人が直後に警察に電話をかけて自首し、女性の遺体が発見されたことで事件が発覚した。
後に「名古屋闇サイト殺人事件」と名付けられたこの事件の犯人たちは、犯罪を行う仲間を募集するインターネットサイト「闇の職業安定所」という掲示板を通じて知り合い犯行に及んだ。事件は仲間を募る書き込みをしてから8日後、顔を合わせてから3日後に起こった。 
事件があまりにも残虐で無計画なものだっただけに、マスコミは大きく報道した。「闇サイト」の存在が明るみになった頃で注目度も大きかった。実際、私もこの事件はよく覚えている。顔も見たことがない、縁もゆかりもない男たちが、金品強奪の目的のため一人で歩いている若い女性をターゲットにした、という恐怖と怒り。屈強の男三人にかかったら、女一人を誘拐するのにわずか1,2分しかかからないのだ。 
幼いころに父親を亡くし、母一人子一人で生きてきた31歳の女性の一生を、著者の大崎善生は丁寧に書きとっていく。高校時代、母が教師に「どうやったら、あんな素晴らしい娘さんに育つのですか?」と問われるほどの娘について、母は丹念に語る。大崎は平易な言葉で淡々と綴っていく。事実は事実として、母の

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