『SS将校のアームチェア』ユダヤ系歴史家の調査が 「一般のナチ」の姿に迫る

書評総合

SS将校のアームチェア
作者: ダニエル・リー
出版社: みすず書房
発売日: 2021/11/19

本書の著者、ダニエル・リーは第2次世界大戦を専門とする歴史家で、ユダヤ系英国人でもある。あるとき彼に依頼が舞い込んだ。依頼主はヴェロニカという女性だ。彼女の母が故郷のチェコで購入したアームチェアを修理に出した際、座面の中からナチスに関する書類が出てきたという。依頼は、なぜそんな物が椅子の中に隠されていたのかを調査してほしいというものだった。

書類は1933〜45年のもので、戦時債券、株券、上級国家公務員2次試験の合格証明書、パスポートなど。どの書類にも、Dr.ローベルト・アルノルト・グリージンガーという名前が記されていた。グリージンガーは法務官で、43年3月にナチ占領下のプラハに派遣されていたようだ。その来歴に興味を持った著者は早速調査を開始する。

書類を頼りにドイツやチェコ・プラハなどの公文書館を訪ね歩き、この男がシュトゥットガルト出身の法務官で、ナチ党員にしてSS(親衛隊)の将校であったこと、終戦後にプラハで死亡したことが判明した。著者はこの事実に強く興味を引かれる。

というのも、ドイツ敗戦後に裁判にかけられたのはナチの大物幹部のみ。「一般のナチ」が訴追されることはなく、彼らは口をつぐみ、過去をもみ消し、自らもナチに騙された被害者だと装った。ドイツには、戦前の家族の振る舞いについてタブーとされている家庭も多い。一般のナチとはどのような人々であったのか。グリージンガーを通してその実態に迫れると考えたのだ。

本書は、いくつもの視点で読むことがで

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