『日曜日/蜻蛉-生きものと子どもの小品集』(中央公論新社) – 著者: 志賀 直哉 – 阿部 公彦による解説

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『日曜日/蜻蛉-生きものと子どもの小品集』(中央公論新社)著者:志賀 直哉
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志賀直哉には、子供や生き物を扱った作品を集めた『日曜日』と『蜻蛉』という二つの短編集があった。本書はこれを一冊にまとめたものである。こうした試みは志賀直哉の文庫としてははじめてで、偉大な文豪というイメージに敷居の高さを感じていた人も、これならさほど手に取りやすいのではないかと思う。収められているのは「清兵衛とひょうたん」「城之崎にて」「小僧の神様」といった有名な作品の他、ごく気軽に頁を繰ることのできるスケッチ風の掌編や、明るい童話風のものも含まれていて、志賀文学への入り口としてとても新鮮である。かつては国語の教科書をひらけば必ず目次に志賀直哉の名前があったものである。時代の流れもあり今ではそうした傾向に変化が見られるが、今回収録された作品を読み返すと、若年層向けの作品として志賀文学が大きな魅力を持っていることにあらためて気づかされる。彼の作品には不思議なルートで「こども」への道が開かれているのである。志賀の作品は一見すると難し気なところがあり、「おとな」向けのものととらえられがちだ。私も国語教科書に掲載されたその作品を読んで、「こんな微妙な味わいのものを中学生や高校生が理解できるのだろうか」と思ったことがある。「城の崎にて」など、それなりに志賀作品に馴染んだ人でも「これで十分に理解したことになるのだろうか?」と思わず自問したくなる引っかかりどころがある。複雑な心理がきわめて暗示的に描出され、おそらく語り手や、作家本人にも把握できていないのかもしれない、

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