『第七官界彷徨・琉璃玉の耳輪 他四篇』(岩波書店) – 著者: 尾崎 翠 – 中野 翠による書評

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『第七官界彷徨・琉璃玉の耳輪 他四篇』(岩波書店)著者:尾崎 翠
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尾崎翠『第七官界彷徨』
『第七官界彷徨』という不思議なタイトルの小説と出会ったのは、昭和四十四年のことだ。學藝書林というところから「現代文学の発見」というシリーズもののアンソロジーが出ていて、その第六巻に収録されていた。この本を私はいまだに捨てられずに持っているのだが、その本の奥付けを見ると昭和四十四年一月十日第一刷発行となっている。確か私は本が出版されてすぐに買ったから、この日にちとあまりズレていないある日に、初めて『第七官界彷徨』を読んだということになる。
よほど遠い過去のこと、秋から冬にかけての短い期間を、私は、変な家庭の一員としてすごした。そしてそのあいだに私はひとつの恋をしたようである。
という書き出しで始まるこの小説に、私はたちまちぐんぐんと引きずり込まれた。小説を読むことの喜びのひとつは、「ここにもう一人、私と同じ感じ方をしている人間がいる。私と同じ事柄に立ち止まり、こだわって、それを言葉にしている人がいる。私は一人じゃないんだ。孤独じゃないんだ」という喜びであって、若いころはとくにそういう種類の、小説の中に同族を求めたがる気持が強かったような気がする。『第七官界彷徨』は小野町子という若い女の子が、その兄である小野一助と小野二助、それからいとこである佐田三五郎との、古ぼけた一軒家での共同生活の日々をつづった形をとっている。小野町子は彼らの身のまわりの世話をしながら、ひそかに詩人をめざしている。彼女は「人間の第七官にひびくような詩」を書きたいと思って

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