『干物のある風景―View of Dried Fish』(東方出版) – 著者: 新野 大 – 南 伸坊による書評

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『干物のある風景―View of Dried Fish』(東方出版)著者:新野 大
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奇妙な写真集である。繰っても繰っても、干物だ。最初から最後まで、どこから開いたって干物が並んでる。「規則正しく並べられたイカやアジたちが干されている風景が、なんとも綺麗(きれい)で、いつからか写真に収めるようになりました」と著者・新野大さんはまえがきに書いている。北海道から沖縄、アジアの一部まで、十年かけて撮影したポジの中から選びぬいて写真集にしたそうだ。全部、干物のある風景だが、なるほど一枚ずつ見ると、それぞれに、それぞれだし美しい。東南アジアの国々の干物の干し方と、日本の干し方が違う。日本人はあきらかに、ただ干す以上のことをしている。以前、シチリアの八百屋さんの野菜の並べ方が、機能度外視の芸術的色彩感覚であったのに大いに感心したことがあった。干物の干し方にも、きっと各国に特有の感覚があるハズだ。アジア編にベトナムが入っていなかったけれども、おそらく韓国、台湾、マレーシアと、並べ方が違うハズだと私は思う。ひたすら並んで吊(つ)るしてある、干物の写真から、想像がイロイロに広がっていく。ミズダコの足が一本ずつ吊られていたり、まるで洗濯物みたいにケンサキイカが吊るされていたり、マアジやウルメイワシが、マスゲームみたいに干されている。近頃は天候に左右されない機械乾燥に移行して、この美しい風景もなくなってしまうのでは? という危機感が著者にはあるらしい。たしかにこの風景は残しておきたいと私も思う。【初出メディア】朝日新聞 2006年07月23日朝日新聞

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