『一人の男が飛行機から飛び降りる』(新潮社) – 著者: バリー・ユアグロー – 豊崎 由美による書評

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『一人の男が飛行機から飛び降りる』(新潮社)著者:バリー・ユアグロー
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ちょっとヘンな夢をみてしまうことはしばしばある。僭越ながら、わたしの例を挙げると――。真っ白な診察室にいる。やがて、看護婦を伴った医者が登場。医者は「どんな具合ですか」と尋ね、わたしは「まあまあです」とか何とか答えている。「じゃあ、ちょっと様子を見てみましょうね」と言いながら、わたしの頭の中に手を突っ込むと何やら取り出す医者。「ああ、まだまだダメですね」。医者の手の中にはたくさんの茶色に乾燥した、しかし生きて蠢(うごめ)くうじ虫がいる。「ほらね、ほらっ、ほらっ」と言いながら、医者は何度もわたしの頭の中に手を突っ込んではうじ虫を取り出す。――とまあ、この手の奇妙な夢は現実生活では得難い不思議な心地をもたらしてくれる、大方においては愉しい代物なんではある。でも、中には夢を覚えていることができない人もいるわけで。そんな不幸な方にオススメしたいのが、バリー・ユアグローの超短編集『一人の男が飛行機から飛び降りる』なのだ。超短編集というだけに、ここに収められた一九四の作品のたいていのものは一ぺージから三ページの話。が、たとえば星新一のショート・ショートのようなオチのあるアイディア・ストーリーとはちょっと違う。唐突に始まる奇天烈(きてれつ)な設定に合理的な解説を加えることなく、奇天烈を奇天烈のままにポンと投げ出す、にもかかわらず何だか妙に納得できるといった具合の話ばかりなのだ。帯に「楽しい悪夢の再生装置」とあるけれど、たしかにユアグローの超短編の構造は夢にとてもよく似てい

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