『自殺の国』(河出書房新社) – 著者: 柳 美里 – 江國 香織による書評

書評総合

『自殺の国』(河出書房新社)著者:柳 美里
Amazon |
honto |
その他の書店
途方に暮れた“普通の少女”の可憐な青春
随分恐い表紙(とタイトル)なので、恐がりの私としては、最初、読むのがためらわれた。けれど読んでみてわかった。これはとても可憐な本だ。顔の見えない他人と(ときに陰湿な)やりとりをする「ネット」、そこで「自殺」を計画したり、一緒に死ぬ仲間を募ったり、実行したりする人々、という道具立てはたしかに不穏で毒々しいが、背景に惑わされずにまっすぐ読めば、そこにはごくありふれた、一人の、少女がいる。ごくありふれた少女、というのは繊細な少女のことだ。繊細で、当然ながら独特で、知識も経験もすくなく、だから自信は持てず、不安で、でも自意識は余るほどあり、周囲を観察し、観察すれば失望したり批判的になったりせざるを得ず、けれど周囲を気遣う術(すべ)も心得ていないわけではないので、陽気にふるまったり、迎合するふりをしたりも、する少女。本書の主人公、市原百音(もね)は、そういう普通の少女である。小説を読む限り、家族とも仲がよく、友達もいる。私はそこをおもしろいと思った。すくなくとも他者から見る限り、彼女には「自殺」する理由がないのだ。そして、本人もそのことを知っている。ここには、勿論テーゼが含まれている。自殺する理由がない、ということが、自殺しない理由、すなわち生きる理由になるのかどうか――。さらに、仲のいい家族というものの、仲はほんとうにいいのか、友達だと言い合っている人間を、信じる根拠はどこにあるのか。そんなことを考え始めれば、少女でなくとも途方

リンク元

コメント

タイトルとURLをコピーしました