『書物と権力: 中世文化の政治学』(吉川弘文館) – 著者: 前田 雅之 – 櫻井 彦による書評

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『書物と権力: 中世文化の政治学』(吉川弘文館)著者:前田 雅之
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「古典的公共圏」の成立 ―江戸期以前、書物はどのような役割を果たしたか―
プロローグで著者は、出版業が興った江戸期以降現在まで、書物は売買可能な商品であり、人々はそれをおもに実用、趣味・娯楽、教養といった目的から読んできたとした。そのうえで、それ以前には書物が如何に読まれ、普及し、書物自体がどのような役割を果たしたか、という点に注目したのが本書である。章立てを追って概要を示せば、まず「古典的公共圏」では、中世社会で古典的教養を身につける書物は『古今集』『伊勢物語』『源氏物語』『和漢朗詠集』だったが、これら四書は鎌倉時代末期までに注釈書や校本が作られ、規範とされる作品として「四大古典」とも言うべき書物であったとする。こうした文化的な要素も共有する政治的・経済的・宗教的な社会秩序を「古典的公共圏」と名付け、その成立時期を後嵯峨院政期として、それ以後古典や和歌を度外視した人間関係は存在しなくなるとした。そして「伏見宮家と足利将軍」では、具体的に『風雅集』や『玉葉集』をめぐる動向を検討し、両書を贈与した伏見宮家にとっても、それらを受け取った足利将軍家にとっても、その行為は権力と権威の正統性を確保する役割を果たしたとした。また「一条兼良『源語秘訣』の変遷」では、死去に際し「日本無双の才人」などと称された兼良の『源氏物語』注釈をめぐる行動に注目した。とくに子息冬良に伝えた秘伝書『源語秘訣』について、「堅く外見を禁ず」とされながらも、活発に展開された書写活動と広範な伝本状況を

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