武井彩佳『歴史修正主義』(中公新書) 9点

書評総合
 既存の歴史の書き換えを図る「歴史修正主義」(revisionism)、近年この言葉を聞く機会が増えましたし、それが良くないことであるとの認識も広がっています。 ただし、「何が歴史修正主義なのか?」という難しい問題でもあります。ここ最近、織田信長について今までの「革命児」的なイメージが否定され、「意外と保守的で常識的な人物であった」との見方が研究者の間で強まっていますが、今までの歴史の見方を修正するものであってもこれを「歴史修正主義」とは言わないでしょう。 本書はこの捉えにくい概念である「歴史修正主義」と、さらにそれを一歩進めた「否定論」(denial)をとり上げ、その問題点と、歴史修正主義と歴史学を分かつもの、ヨーロッパで歴史修正主義の代表である「ホロコースト否定論」がいかに法的に禁止されるに至ったかを紹介しています。 簡単に割り切れない問題だけに「問題を一刀両断する」といった勇ましさはないのですが、この本の特筆すべき点は記述が非常にわかりやすい点です。これだけ複雑な問題を扱っていながら非常にスムーズに頭に入ってきて、なおかつ深く考えさせられます。 新書の役割の1つが問題への入口を示すことであるとするなら、本書はまさにベストな内容だと思います。 目次は以下の通り。序章 歴史学と歴史修正主義第1章 近代以降の系譜第2章 第2次世界大戦への評価第3章 ホロコースト否定論の勃興第4章 ドイツ「歴史家論争」第5章 「アーヴィング裁判」第6章 ヨーロッパで進む法規制第7章 国家が歴史を決めるのか まず、歴史修正主義の厄介さを感じてもらうために、本書の中で引用されている文章を紹介します。

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