『樋口一葉』(筑摩書房) – 著者: 樋口 一葉 – 中野 翠による解説

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『樋口一葉 』(筑摩書房)著者:樋口 一葉
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私は一葉が好きだが、ただもう楽しんでいるだけで研究的情熱には乏しい。詳しいわけでも何でもない。だから「解説」といったものは書けないのだが、その魅力については少し語れると思う。いや、語りたいと思う。特に、「大つごもり」「たけくらべ」「にごりえ」「十三夜」「わかれ道」――この五篇。明治二十七年(一葉、二十二歳)から明治二十九年(二十四歳)にかけて書かれたこの五篇を読むと、見ず知らずの人の袖をつかんで「ねえねえ、読んで読んで」と言いたくてたまらなくなる。誰かれ構わず一葉を読む快感を共有したくなる。この五篇を生み出した時期が「奇蹟の十四カ月」と呼ばれているのも、もっともなことだと思う。
「大つごもり」「わかれ道」
言葉、言葉、言葉だ。何と言っても文章がすばらしい。この全集で「闇桜」「うもれ木」「琴の音」「やみ夜」と読み進んで来た人は、「大つごもり」に至って、一葉の作風がガラリと変わっていることに驚くだろう。それまでの小説は(「うもれ木」はやや異色とはいえ)いかにも明治の「閨秀作家」らしくロマンティックだったのが、「大つごもり」になると俄然、リアルで下世話な貧乏話になる。カネをめぐる話、金銭小説だ。「大つごもり」の冒頭に登場する「受宿(うけやど)の老媼(おば)さま」のセリフに、まず、しびれる。「機嫌かい」だの「目色顔色」だの「お前の出様(でよう)一つで」だの。何と面白く含みのある表現なのだろう。何と素敵に俗っぽい日本語なのだろう(今は亡き大女優・杉村春子が演じたらさぞかし、と思わせる)。ヒロイ

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