『戦争とラジオ―BBC時代』(晶文社) – 著者: ジョージ・オーウェル – 猪瀬 直樹による書評

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『戦争とラジオ―BBC時代』(晶文社)著者:ジョージ・オーウェル
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情報ファシズムへの暗い予感
オーウェルの未来小説『一九八四年』は、第二次世界大戦が終結し、冷戦時代に突入した一九四九年に発表された。ヒトラーやスターリンの恐怖政治の実相を未来に転位させて描いたと理解されている。だがオーウェルの真の標的はメディアの自己増殖とその一元的管理による情報ファシズムにあったと思う。実際、ヒトラーやスターリンのようなあからさまな独裁者は(北朝鮮を除けば)もう現れないのだ。では民主主義と呼ばれる社会にあって、『一九八四年』は過去のものだろうか。決してそうではない。ただ情報操作の主体が複雑に入り組んで視えにくくなったにすぎない。『一九八四年』にたどり着くにあたってのミッシングリンク(失われた環)を発掘し明示したものが本書である。オーウェルは一九四一年八月から四三年十一月まで二年三カ月にわたって英国国営放送BBCに勤務していた。その期間はこれまで「空費された歳月」と呼ばれた。ところが新資料を発掘した編者W・J・ウェストは、逆にBBC時代こそ、オーウェルの新たな飛躍のための雌伏期間であったと論じている。BBCのインド向け放送に関わったオーウェルは、情報管理の現場に身を晒(さら)すことになった。インドでは独立運動が英国統治を脅かしている。戦時下においては、さらにドイツや日本が反英闘争に加担するわけで、そういうなかBBCインド向け放送は反ファシズムのプロパガンダの使命を帯びる。オーウェルは微妙な立場で仕事を余儀なくされる。反ファシズムという正義の旗を掲

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