『魔女とキリスト教』(講談社) – 著者: 上山 安敏 – 山折 哲雄による書評

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『魔女とキリスト教』(講談社)著者:上山 安敏
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近代社会成立の根拠を問う
ヨーロッパの歴史を暗黒に染めあげる異端審問と魔女狩りは、ユダヤ=キリスト教社会が生んだ双生児である、――それが本書を彩る第一テーマである。 つぎに、ヨーロッパの社会は骨のズイまで父権的な一神教に浸されていたわけではない。その深層にはオリエント的な異教と地中海縁辺の太母信仰が流れていた、――それが本書の背景をなしている第二テーマである。 深層の太母信仰と表層の一神教の葛藤、相克のなかから、異端排除の「差別」と魔女狩りの「いじめ」が発生したが、それははたしてキリスト教社会に固有の現象だったのか、それとも人類が負うべき宿命なのか。近代社会成立の根拠を問う厳しい歴史的な視線と人間の深層意識に探りを入れる鋭い洞察が、本書に味のある奥行きを与えている。 それにしても、そこに総動員されている魔女学、悪魔学にかんする文献の広がりはどうだろう。神話学と民族学、教会史と法制史、聖書学と医学史と、あげていけばきりもないが、その資料の山をかみくだいて右にあげた二つのテーマにしぼりこんでいく手並みはやはりただごとではない。魔女の二類型を南欧型と北欧型に整理するかと思うと、中世の女性像がマリアと魔女に二極分化していくプロセスを浮きあがらせる。十三世紀にはじまる異端審問が、十六―十七世紀にピークを迎える魔女迫害と内的連関を保ちつつ接続していく歴史の起伏を再現しているところは、一幅のパノラマをみるようだ。それに関連して、ヨーロッパでの最初のユダヤ人大虐殺が魔女迫害の発生のいきさつと時代

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