『郵便配達夫シュヴァルの理想宮』(河出書房新社) – 著者: 岡谷公二 – 藤森 照信による書評

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『郵便配達夫シュヴァルの理想宮』(河出書房新社)著者:岡谷公二
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奇怪な石の迷宮にきらめく無垢な魂
昭和のはじめ、深川に二笑亭と呼ばれる家があったことは聞いているだろう。家全体を迷路のように作り、壁の板のフシ穴にガラスをはめたり、土の代わりに黒砂糖を塗って壁にしたり、まことに不思議な家であった。なお、私が二笑亭の御子息にうかがったところでは、黒砂糖を塗ったというのは正確ではなくて、一度塗ったが蟻が寄ってきて困り、砂糖と蚊取り線香を混ぜてスリ鉢でスリ、それを塗ったのだという。二笑亭のほかにも、近年の例ではリポビタンDの空きビンを積み重ねた家とか、浜辺の漂着物を拾い集めて作った家とか、マアその筋の血脈は絶えない。日本でもそうだから、広い世界にはそういう奇妙な情熱に取りつかれたセルフビルダーは大物小物入り乱れてたくさんいるが、チャンピオンということになると、アメリカのワッツ・タワーズのロディア氏とフランスの理想宮のシュヴァル氏にとどめをさすだろう。そのシュヴァルについての本が日本ではじめて出た。式場隆三郎ほか著『定本二笑亭綺譚』(ちくま文庫)と並んで日仏の奇っ怪建築の本が整った。慶賀すべきことかどうかは知らないが、子供の頃からいつかはやってみたいと思いながら教養と常識と配偶者に邪魔されてやれないでいる私としては、せめてシュヴァルの本『郵便配達夫シュヴァルの理想宮』(作品社)の紹介でもして一時の渇をいやしたい。理想宮と名づけられた建物は、いってみれば小石で作られたグロテスクな宮殿で、これをたった一人でコツコツと作りあげたのはフランスの田

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