『新しいおとな』(河出書房新社) – 著者: 石井 桃子 – 江國 香織による書評

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『新しいおとな』(河出書房新社)著者:石井 桃子
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すべての大人の課題図書にしたい
すっきりしたブルーの表紙カバー、「新しいおとな」という小気味のいいタイトル、なんて颯爽とした本だろう。石井桃子以前と以後で、日本の子供の本棚に雲泥の差ができたことは周知の事実だが、この本にはその事実の断片が、丁寧に、清潔に書きつけられている。初出のいちばん古いものは一九四一年、いちばん新しいものが二〇〇七年なので、六十六年分の断片ということになる。六十六年! 一冊のエッセイ集に流れる時間としてはかなり長いし、そのあいだには、日本人の暮らしぶりも、子供をとりまく環境も、大きく変化している。でも――。この本に登場する子供たちはいまの子供たちとちっとも変わらないように見えるし、ここにでてくる、子供たちの好きな本は、いまもちゃんと書店にならんでいる。いいものがどんどん手に入りにくくなっている、大人の本の世界とは大違いだ。ファンタジーとは何かをめぐる一章がすばらしい。「ファンタジーとは現実には存在しないふしぎのあらわれてくる物語だ」とした上で、子供は「すぐさま、いろいろなことをおぼえ」、そういうふしぎが現実とは違うことを知るのだが、だからといって、そういう「架空な世界」と「縁を切るわけではありません」、と石井桃子は書く。「子どものなかにはそのようなふしぎを半ば信じ、半ば望む気もち、そうであるふりを楽しむ気もちなどがいりまじって住んでいるからです」、と。そうであるふりを楽しむ気もち!なんていう余裕、なんていう大人っぽさ、なんていうエピキュリアンぶりだろう。大

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