『中原中也――沈黙の音楽』(岩波書店) – 著者: 佐々木 幹郎 – 蜂飼 耳による書評

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『中原中也――沈黙の音楽』(岩波書店)著者:佐々木 幹郎
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日本語の「歌」、実作者の目から
中原中也における「歌」の問題を、本書は詩と詩集(『山羊の歌』『在りし日の歌』)の生成過程を独自の見方で追うことにより、従来にないレベルで解き明かす。中也や詩になじみのない読者にも、詩の好きな読者にも、それぞれに反応できる位相で記述が展開されている点が魅力だ。中也の生涯と時代背景にも触れることができる入門的な面を充分に具えている一方で、精緻で専門的な分析が最新の中也研究の視点をひろく伝える。本書の論には、現代の日本語で詩を読み書きすることの根底にあるさまざまな問題、つまりリズムや音律的な特徴を捉え、これからの詩を考える上で大事な論点がいくつも含まれている。その意味で、詩のみならず、日本語による表現全般に及ぶ論の糸口が示されている。とりわけ重要で興味深い箇所は、冒頭にも書いた「歌」をめぐる分析だ。といっても、短歌や歌唱のことでなく、〈文字の上で成立する「歌」と「声」〉を指す。著者は、同時代の詩人・批評家の岩野泡鳴による評論や発想に、まるで共鳴するように、中也の詩がかたちを成していったと論じる。新しい指摘であり、説得力がある。たとえば詩「曇天」の分かち書き(字間をあける書き方)の方法に、泡鳴の影響を見る。中也は〈日本の詩語のなかに、文字化されることによって削り取られてしまった身体的なリズムを回復しようとしていた〉という。歌唱や朗読とは別問題。あくまでも、書かれた詩が含み持つ「歌」であり、リフレイン(繰り返し)やリズムが生み出す力に中也が鋭く反応

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