『われらが背きし者』(岩波書店) – 著者: ジョン・ル・カレ – 小野 正嗣による書評

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『われらが背きし者』(岩波書店)著者:ジョン・ル・カレ
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スパイ小説、語りに仕掛け
オックスフォードの元教員ペリーは彼の恋人で弁護士のゲイルと訪れたカリブ海のリゾート地で、ロシア人の富豪ディマからテニスの試合を申し込まれる。だが、武装した護衛に守られ、5人の子供たちと信心深い妻と暮らすこのディマの真の目的は、テニスの試合ではなかった。ロシアの犯罪組織の幹部でマネーロンダリングの専門家であるディマからメッセージを託されたペリーは、英国諜報部に接触する。彼は恋人を危険な企てに巻き込みたくないが、ディマの美貌の娘ナターシャの秘密を知ったゲイルは、ひるむことなくペリーと行動を共にする。そしてこの二人を、一匹狼的な諜報部上級職員ヘクターが腹心の部下らとバックアップする。ディマが組織を裏切り、命を賭してまで伝えようとする国際金融市場に関する情報とは? この情報の信憑性をめぐって諜報部内に生じる対立の行方は? 思えばスパイ小説ほど不自由なものはない。国家に脅威をもたらす謎が提示され、その解明が秩序の回復をもたらすというパターンを踏襲せねばならないのだから。にもかかわらず、ル・カレがこれほど〈読ませる〉のはなぜか?語りに多くの仕掛けがなされているからだ。前半に多用される回想シーンは、先を急ごうとする読者の好奇心をかき立てる。登場人物たちもまた、主人公のペリーとゲイルに劣らず、個々の犯罪者、諜報部員が、内的な苦悩と葛藤とともに立体的に造形されている。冒頭とクライマックスで重要な役割を果たすテニスの試合など、細部が実に有機的に連動している。だが冷戦

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