『疱瘡神 江戸時代の病いをめぐる民間信仰の研究』(岩波書店) – 著者: H.O.ローテルムンド,Hartmut O. Rotermund – 山折 哲雄による書評

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『疱瘡神 江戸時代の病いをめぐる民間信仰の研究』(岩波書店)著者:H.O.ローテルムンド,Hartmut O. Rotermund
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はやり神信仰の生態えぐる
疱瘡(ほうそう)神にとりつかれた著者が、江戸時代に盛んになったこのはやり神信仰の内側にわけ入り、その生態の明暗を縦横にえぐりだした珍しい研究である。まず疱瘡の怖ろしさが克明にたどられる。伝染力のすさまじさ、病状の無惨さなど。ついで疱瘡の治療と予防のためにくりだされる対抗手段が豊富な資料にもとづいて紹介される。疱瘡踊りの奇習、お守りや唱え言、守護神のでっちあげ、禁忌や断ち物など、――苦肉の策あり、ジョークのようなおまじないあり、理にかなった衛生観念ありで、江戸時代人の硬軟とりまぜた出処進退のありさまが活写されていて、飽きがこない。なかでも傑作なのが、この疫病退治のために制作された色とりどりの疱瘡絵と疱瘡絵本だ。原図と原文を出し、手堅い解説を加え、この時代の想像力の特色を浮き彫りにしているところが面白い。たとえばホーソー退治の英雄、鎮西八郎為朝の登場とその背景など。申しおくれたけれども著者は現在、フランス国立高等研究院で日本宗教を講ずる教授で、本書は一九九一年にパリで出版されたものの日本語版である。早くから修験道や山伏の研究に手をそめ、その過程で、ある山伏の修行日記のなかにこの疫病の呪術的治療にかんする貴重な記述をみつけ、それがきっかけでしだいに深入りしていった。が、当時においてもむろん、この庶民に怖れられた伝染病について合理的な考察を加えた橋本伯寿のような医師がいた。その主

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