『中世の写本ができるまで』(白水社) – 著者: クリストファー・デ・ハメル – 本村 凌二による書評

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『中世の写本ができるまで』(白水社)著者:クリストファー・デ・ハメル
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<知>の伝達の神髄へいざなう
人間がほかの動物と異なるのは、人類の過去の経験や知識を身につけられるからにほかならない。ヨーロッパでは、印刷術が拡がるルネサンス期まで千数百年にわたって、写本が制作されてきた。本書は、その工程について「紙と羊皮紙」「インクと文字(スクリプト)」「彩飾と装丁」の項目の下で、七九点の美しいカラー図版とともに語っており、わくわくするような読書体験ができる。まずもっての疑問は、これらの中世写本は修道士が作ったのかという点にある。たしかに、十二世紀までは写本は修道院か教会で制作されていた。だが、それ以後、書物が増えだすと、修道院は俗人の写字生(しゃじせい)と写本画家を雇って、共同で書物を制作させたという。やがて、世俗の工房が写本を筆写・装飾して広く販売するようになったらしい。次なる疑問は、写本制作にかかった時間に関するもの。修道院での写本制作の時代はゆったりしており、一年に三、四冊ほど仕上げていたという。ところが、職人写字生が大半になる時代には、出来高払いだったせいか、なかには一冊を五十二~五十三時間で仕上げたことを自慢する「早業師(ヴェロックス)」も出て来たのだった。さらなる疑問は、中世写本の作り方をめぐるものだが、それこそ著者の語りたいことであるのだ。まずは羊皮紙が動物の皮から作られ、とくに牛と羊が用いられたという。その羊皮紙は全紙が長方形になっており、それを重ねて折りたたんで折丁(おりちょう)とよばれていた。もともと写本は、小さな折

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