『三人の女たちの抗えない欲望』(早川書房) – 著者: リサ・タッデオ – 小川 公代による書評

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『三人の女たちの抗えない欲望』(早川書房)著者:リサ・タッデオ
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「正しい関係」の外にある愛
「愛の疎外と失望こそ、エロスを構成するものである」という英文学者でフェミニズム思想家の竹村和子の言葉がある。この言葉の背景には、家庭内の生殖を射程においた愛の経験は、エロスの経験として語れないという認識がある。すなわち、予定調和でないエロスを生きるなかで愛は語り得るというのだ。竹村が人間と吸血鬼の物語を「愛そのものが本来的にもつ困難さ」を描く文化表象として言及しているのは分かりやすい例だろう。このノンフィクションで著者が取材した3人の女性たちも、合法的な「正しい」関係性では愛の困難を経験する快楽が希釈されると感じている。彼女らには、自身が経験した「生々しい欲望をそのままさらけ出す」覚悟があった。既婚者リナとスローンが婚外交渉における愛の困難を語るとき、そこに既存の物語が再生産されているのも共通している。夫との冷めた関係に苦悩し、SNSで再会した初恋の相手との愛が再燃するリナのお気に入りの映画は、真実の愛を物語る『プリンセス・ブライド・ストーリー』で、夫の意向で夫以外の男女と性行為に及ぶスローンは官能小説『フィフティ・シェイズ』を読んでいる。饒舌に語れる愛ほどじつは秘匿せざるを得ないという逆説を孕み、その性質はもっとも脆弱な高校生マギーを傷つけ、さらには声を奪ってしまう理由になった。既婚者の男性教員アーロン・クヌーデルの性的な対象となったマギーが彼の愛に応えたとき、人間と吸血鬼という「悲運の恋人たちが育む強い絆」を描いた『トワイライト』が

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