上林曉「現世図絵」を読む

小説の書評と感想
 筑摩書房の「現代日本文学全集 補巻8 上林曉集」(1975年2刷)より、4番めの作品、「現世図絵」を読み了える。 先行する「嶺光書房」は、先の4月5日の記事にアップした。 「現世図絵」は、敗戦前年の1944年の夏に、神経に異常をきたした作家の妻・徳子を、家族で致し方なくK療養院へ何度めかの入院をさせる話である。さすがに作家が語るのではなく、娘・篤子が語る形になっている。 妻は食料を独占して食べようとし(稀に機嫌が好いと、夕食を午後3時に出したりする)、家族で食料の奪い合いになる。 妻の弟・武叔父さんと作家が、役所へ行って申請の書類を書く。徳子の母親が郷里から出て来るが、入院の手助けするのみになる。医師が来て妻に催眠薬の注射をし、俥屋は寝台車からリヤカーに替えて、療養院へ運んでしまう。 1ヶ月近く経って、作家と篤子が病院を訪ねると、徳子はおとなしくなっていて、証券・通帳などの隠し場所を素直に告げる。それが篤子と母親・徳子の最後の別れとなった。 徳子の異常なエゴイズムも、作家の異常なエゴイズム(自分の妹・綾子に生活の世話をさせてもいる)の、反映のように思える。写真ACより、「ビジネス」のイラスト1枚。

Source: 小説

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