宮下紘『プライバシーという権利』(岩波新書) 7点

書評総合
 タイトルは「プライバシーの権利」ではなく「プライバシーという権利」というスッキリとしないものになっていますが、このタイトルが本書の性格をよく示しているのかもしれません。 本書の副題は「個人情報はなぜ守られるべきか」ですが、実は現在の日本の個人情報保護法はプライバシー権を保護対象としているわけではありません。つまり、日本で認められてきた狭義のプライバシーの権利と、ネットやAIの発展で問題となっている個人情報保護の問題は必ずしも重なっているわけではないのです。 しかし、本書ではプライバシーの権利に含まれているさまざまな考えをたどりながら、プライバシーという概念から個人情報の保護をいかに行うべきかということを探っています。 プライバシーという言葉には、あまりにさまざまなことが含まれているために、最初はわかりにくさも感じるかもしれませんが、プライバシーをめぐるアメリカとヨーロッパの考えの違いや、ヨーロッパの規制のあり方を教えてくれる内容は非常に面白いです。 プライバシーをめぐる過去と未来を展望できる本と言えるでしょう。 目次は以下の通り。第1章 プライバシーはなぜ守られるべきか第2章 進化するプライバシーの権利第3章 個人情報保護法の新時代第4章 プライバシー保護法制の国際動向第5章 プライバシー権をめぐる新たな課題 いつもは本の順序に従って内容を紹介していくことが多いですが、ここでは、まず第2章の内容に軽く触れたいと思います。 アメリカのハーバード大で長年憲法を講義してきたローレンス・トライブは、プライバシーの権利の保護対象を次の5つにまとめています。1 政府による精神の形成(良心

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