『明治維新の意味』(新潮社) – 著者: 北岡 伸一 – 張 競による書評

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『明治維新の意味』(新潮社)著者:北岡 伸一
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民意を反映する流れのきっかけ
2年前、明治維新150周年を迎え、関連書物は数多く刊行されているが、本書は着眼の斬新さ、論述の明晰さ、目配りの広さにおいて群を抜いている。最大の特色は政治外交史の視点から政治決定の過程を捉え、合意形成がどのように達成されたかを検証した点だ。自由民権運動、憲法制定までを対象としたのもそのためである。いかなる政治改革も支配側にとって大なり小なり自己否定を意味している。ましてや権力交代となると、当事者にとって死活問題になる。体制の転換にはしばしば超法規的な手段が用いられ、当事者が衝突したり、流血を招いたりすることも珍しくない。しかし、大政奉還のとき、国が大混乱に陥ることはなく、周辺国に比べると、戦争ごっこのような局地戦しか起きていない。版籍奉還、廃藩置県、地租改正などはいずれも既得権益が大きく損なわれる大改革であるにもかかわらず、内戦どころか大きな政治的危機にもならなかった。なぜ、日本はそれができたのか。海外でもしばしば議論されていた。著者が注目したのは、公論にもとづく国家の意思決定である。むろん、「公論」とはいっても、現代とは意味がずいぶん違う。五箇条の御誓文(ごせいもん)は「広く会議を興し万機公論に決すべし」と冒頭に掲げているが、本来、想定したのは藩主などの有力者であった。だが、「公議輿論(こうぎよろん)」が当事者のあいだで一種のコンセンサスとなると、有力者だけでなく、有能な下級士族の発言力も増大した。こうして、政治を担う意志と能力のある人間は徹底して議

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