『追憶の東京:異国の時を旅する』(早川書房) – 著者: アンナ・シャーマン – 若島 正による書評

書評総合

『追憶の東京:異国の時を旅する』(早川書房)著者:アンナ・シャーマン
Amazon |
honto |
その他の書店
街が忘れつつある記憶を探る幻視行
東京に十年余り滞在した経験を持つ、英国在住のアメリカ人作家による紀行エッセイ――こう言われるだけで、読者はつい身構えてしまうかもしれない。そういう外国人による日本体験記は数が少ないわけでは決してないのだし、いくら観察者として鋭い目を持っていても、そこには微妙なずれがあることをわたしたち日本人は感じ取ってしまうものである。ましてや、そこに描き出された日本の姿が先入観によるステレオタイプなものであればなおさらだ。しかし、アンナ・シャーマンによる『追憶の東京 異国の時を旅する』は、そうした日本人読者の予断を、快いほどに裏切ってくれる。もう一つ、読者が抱くかもしれない予断は、『追憶の東京』というタイトルで示されている「追憶」が、東京に滞在していた頃の回想だろうという思い込みだ。たしかに、そういう体験記という部分は、本書にもある。しかし、本書が描こうとする「追憶」は、東京という街が江戸と呼ばれていた頃から持っている記憶を呼び起こそうとする試みである。そんなことが、日本人ではない異邦人にどうしてできるのか、と問いたくなるかもしれない。本書に登場する、徳川家の第十八代当主も著者にこう言う。「あなたは東京のことを本に書くとおっしゃるが、どうして書けるのかがわからない。この街はどこもすぐに変わってしまいますからね」記憶を発掘する旅に著者を導くのは、作曲家の吉村弘が書いた『大江戸 時の鐘 音歩記(おとあるき)』という本に出てくる、「目を閉じて音

リンク元

コメント

タイトルとURLをコピーしました