『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』(集英社) – 著者: 河野 啓 – 武田 砂鉄による書評

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『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』(集英社)著者:河野 啓
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自らの虚像に囚われた登山家の危うい実像
2018年、エベレストへの登頂を目指している最中に滑落死した登山家・栗城史多(くりき・のぶかず)。凍傷で9本の指を切断していた彼はなぜ無謀な挑戦を続けたのか。かつて、彼のドキュメンタリー番組を制作した著者が、疑念を抱えながら、その最期を追う。冒険・探険にまつわる作品を数多く読んできたが、栗城の著作は通読することができなかった。なぜならば、そこに注がれたメッセージがあまりに直接的で安っぽく思えたから。自身の冒険について、栗城は「冒険の共有」と呼んでいた。冒険の模様を自撮りする理由を「だって、もったいないじゃないですか? こんなに苦労して登っているのに誰も知らないなんて」と述べ、インターネットでの生中継を「夢の共有」と位置付けていた。多くのスポンサーを興奮させた「単独無酸素での七大陸最高峰登頂」は虚偽表示で、正確な表現では「単独での七大陸最高峰登頂、および無酸素でのエベレスト登頂」だった。栗城は色紙に「無酸素 栗城史多」と書き、自己演出にこだわった。経営者らが彼の言動に魅せられ、多額の資金が集まる。資金を得たならば、相応の結果を出さなければいけない。結果を出せば、また資金が増える。そのために、結果よりも、どう見られるかを優先し続けた。いかに自分を知ってもらうか、認めてもらうかを考える。自分も周囲も、やたらと「夢」を連呼し、体力や精神力を鍛えるよりも、夢があれば、夢を集めれば、不可能などないんだ、といった言動を重ねていった。自

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