『医療倫理超入門』(岩波書店) – 著者: マイケル・ダン,トニー・ホープ – 村上 陽一郎による書評

書評総合

『医療倫理超入門』(岩波書店)著者:マイケル・ダン,トニー・ホープ
Amazon |
honto |
その他の書店
論理によって議論を点検する
本欄で扱う書物として、出来る限り邦人の著者の仕事を紹介しようと、翻訳ものは避けてきたつもりだが、本書の安楽死・自殺幇助を扱う第二章冒頭で、この議論をする際に「ナチスのカードを切る」ことは誤ったレトリックである、と断言しているのに出合って、評子も同じことを述べた覚えがあり、まことに我が意を得たりと思ったために、こうして取り上げることになった。ホープの単著で、二〇〇七年に同じ訳者で『医療倫理』として出版された(書肆(しょし)も同じ)旧版の増補改訂版。岩波科学ライブラリー収録の一冊だから、それほど大きな書物ではない。医療倫理に関して、なかで主題的に扱われている具体的なトピックスは、上掲の安楽死・自殺幇助のほか、第四章の胎児、生殖技術、第五章の精神疾患、第六章は認知症を題材に、介護・支援の問題、第七章は医療経済や医療較差、第八章は遺伝子解析という具合で、現代社会が医療の発展に伴って抱えている問題が、ほぼすべて論じられている。最終章は新規であるほか、各章の記述に増補が多く見られる。最初に上に述べた「ナチス」という「切り札」に関して一言しておきたい。著者たちは、他の箇所でも、論述を進めるための手法として「論理」を常用するが、ここでも、議論に際して「あなたの見解はナチスとそっくりだ」、だから「あなたの見解は不道徳きわまる」として、安楽死や自殺幇助を封殺するレトリックが、如何に妥当性を欠くかを明確に示す。実際日本でも、安楽死の問題に「ナチス」を持ち

リンク元

コメント

タイトルとURLをコピーしました