『現代の英雄』(光文社) – 著者: レールモントフ,ミハイル・ユーリエヴィチ – 沼野 充義による書評

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『現代の英雄』(光文社)著者:レールモントフ,ミハイル・ユーリエヴィチ
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よみがえったロシアの原石
最近めざましいロシア文学の「古典新訳」の機運の中で、一人言わば取り残されたようになっていた文学者がいる。レールモントフだ。彼は十九世紀初頭に、プーシキンを継いで現れた反逆精神たくましいロマン派的な気質の詩人だが、小説家としても『現代の英雄』一作でロシア近代小説の決定的な出発点を築いた。評者自身今回の清新な訳で久しぶりに再読して痛感したのだが、小振りな小説ながら、精緻な文体によって語られる物語は魅力的で、図体が大きいだけに冗長になるきらいもあるドストエフスキーやトルストイの怪物的長編に比べても、文学的な価値において引けをとらない。『現代の英雄』には、本書の主人公ペチョーリン自身が書いた手記から「タマーニ」「公爵令嬢メリー」「運命論者」の三編の他に、語り手の「私」と、ペチョーリンのかつての同僚による語りが交錯し、全五編からなる連作短編集となっている。そのすべての中心にいて、圧倒的な存在感を示しているのがペチョーリンという謎めいた人物だ。 彼は二十代半ばの美青年の将校で、首都での華やかな社交生活も経験しているはずだが、若くしてすでにすべてに退屈し切っている。過去に何があったのか明かされないのだが、何らかの重大な問題を引き起こしたらしく、現地住民との戦闘が続く危険なカフカスに配転されてくる。そして、ため息が出るほど美しく描写される大自然を背景に、ペチョーリンの言動が描かれていく。彼はチェルケス人の豪族の美しい娘ベラを非道なやりか

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