『ゲンロン戦記-「知の観客」をつくる』(中央公論新社) – 著者: 東 浩紀 – 鹿島 茂による書評

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『ゲンロン戦記-「知の観客」をつくる』(中央公論新社)著者:東 浩紀
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「誤配」から生まれる批評的観客
一応はビジネス戦記に分類されるのだろうが、本質は哲学書という不思議に面白い本である。デビュー作でサントリー学芸賞、初の長編小説で三島賞を受賞し、アカデミズムにも地歩を固めて「人生上り調子で、 収入も増えて」いた著者は、なぜかそうしたメインストリームに「強い居心地の悪さ」を感じて、SNSを活用した出版企業を同志たちと起業、メインストリームに代わるオルタナティブ出版社「ゲンロン」を立ち上げる。2010年のことである。「ゲンロン」から出した思想誌『思想地図β』は三万部を売り上げ、順風満帆に見えたが、経理担当者の使い込みという試練に出会う。これで甘さを反省して経営者として目覚めたかというと、そうではなかった。東日本大震災に衝撃を受けて作りあげた『思想地図β vol.2』が売行好調だったにもかかわらず、「売上の3分の1」を被災地に寄付すると宣言したために利益が消える。さらに経理・総務担当者たちの放漫経営、遁走、独断専行、無意味な設備投資、部数の見込み違いなどの迷走が続いて、会社は経営危機に瀕し、領収書や請求書のエクセルへの打ち込みや資金繰りに追われる日々が続く。「そういう作業をするなかで、ついに意識改革が訪れました。『人間はやはり地道に生きねばならん』と」では、なぜアカデミズムや執筆活動に戻らずに事業を続けていたかといえば、中小企業を営んでいた祖父の記憶があったからだ。「大学で教えても、本を出しても、テレビに出ても生

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