『忘却についての一般論』(白水社) – 著者: ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ – 岡嵜 郁奈による書評

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『忘却についての一般論』(白水社)著者:ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ
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明日、六時に。いつもの場所で。くれぐれも気をつけて。愛してる。鳩の脚にくくられた短いラブレターが青い空を飛ぶ。純白の鳩の名はアモール(愛)。その腹には二粒のダイヤモンド。しかしこの物語はラブストーリーではない。舞台となるのはアフリカ南部の国アンゴラ、宗主国ポルトガルからの独立とその後の二十七年にも及ぶ内戦の日々。描かれるのは、飢え、貧困、拷問にリンチ、盗みや殺人の数々。だが三十以上の掌編と詩がつらなるこの物語は、やはり愛についてのものである。時代と運命に翻弄された人々が強かにその人生を生き抜き、偶然と必然に導かれて出会い別れていくさまが「全編にしみわたるユーモアと温かみ」(訳者あとがき)とともに語られる。物語に通底するのは過去(「忘れがたきもの」)への愛惜、そして現在に対する肯定と未来への希望である。作者のジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザは一九六〇年、アンゴラ生まれ。初の邦訳である『忘却についての一般論』は二〇一二年に刊行され、二〇一六年に英国の国際ブッカー賞最終候補まで残ったのち、翌年に国際ダブリン文学賞を受賞した。ポルトガルとブラジル系の両親をもつアンゴラ人の彼の作品には、異文化・異民族の混在という混血文化を背景にした母国の歴史、社会、政治に対するジャーナリスティックな視線と、植民地支配からの解放闘争、それに続く内戦によって失われたものへのノスタルジックな眼差しが共存する。題名はやや堅いが、本を開いてまず心を奪われるのは、「あまりにも過剰な光」に

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