『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』(国書刊行会) – 著者: 乗代 雄介 – 若島 正による書評

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『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』(国書刊行会)著者:乗代 雄介
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世界をつかまえるために繰り返す
中学生のときにパソコンを手にした人間が、ブログを開設してそこで書き続けた。十五年以上経ったいま、「ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ」というタイトルのそのブログに残された文章は膨大なものになり、書き手の乗代(のりしろ)雄介は作家としてデビューし、三作目に当たる「最高の任務」は芥川賞の候補作になった。本書は、そのブログから選ばれた掌編六十七編に、長編エッセイと書き下ろしの小説「虫麻呂雑記」を加えて一冊にした、厚い書物である。乗代雄介は読んだ本からの引き写しをキャンパスノートに書きためていて、そのノートが六冊目になるという。そして、そのノートをときどき見返すたびに、ふと目に留まった文章が大きな助けになるという。だから、彼が書くものには、そのノートからふたたび書き写された文章が頻繁に出てくる。しかし、それを衒学(げんがく)趣味と言うのは当たっていない。そうした文章は、彼にとって決して過去のものではなく、現在の彼の心を動かし、思考を誘うからだ。しかし、そのノートに書き写した現在もまた、時が過ぎれば過去になる。そのときに心に触れたのは何だったのか、それを考えながら彼はまた現在にその文章を作品の中に引用し、その作品を何度も書き直す。果てしない現在の更新だ。そのように読まれた文章が多数鏤(ちりば)められたエッセイ「ワインディング・ノート」は、長く曲がりくねった道で、ときには横道に逸れるように見えても、それはすべて読むこと、書くこと、考え

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