『三國志逍遙』(山川出版社) – 著者: 中村 愿,安野 光雅 – 五味 文彦による書評

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『三國志逍遙』(山川出版社)著者:中村 愿,安野 光雅
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鋭くえぐる歴史とゆったり描かれる風景
画家と中国文学者とのコラボ企画である。三国志といえば、関羽や張飛などの英雄、孔明などの軍師の活躍がよく知られ、その戦国ロマンを誘う物語は多くの人々に愛好されてきた。 かくいう私もその一人であるのだが、画家の安野光雅もそこから出発し、彼らの足跡をたどって中国各地の風景を描いてきており、それらはすでに『繪本三國志』(朝日新聞出版)として出版されている。 中国文学の中村愿(すなお)は、中国の文学や歴史を探って『中国故景』(岩崎美術社)を著すなど、その文物・風物に多大の関心を示してきた。 この二人が連れ立って大陸を旅しながら、三国志の世界に思いを馳せて、成ったのが本書である。それぞれが独自に描き、記したものが合体して成っている。 その際、中村はこの逍遙(しょうよう)の旅を通じて、これまで親しまれてきた三国志の世界とは大きく違う歴史を考えてゆく。それは孔明の敵役ともいえる魏(ぎ)の曹操を高く評価し中心に据えることにあるが、折しも曹操の墓が発見されたというビッグニュースが飛び込んできたのも何かの縁であろう。 中村はその作業を三国志という歴史書の批判的考察に基づいて行う。三国志とはいうが、もともとその名がつけられていたのかも疑わしい。晋(しん)王朝の官僚であった陳寿が著したのは、『魏書』『蜀(しょく)書』『呉(ご)書』の三つであって、これが後に三国志として一括して捉(とら)えられるようになったのであり、やがて陳寿の考えとは全く違った形で享受されてい

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