『検証 奈良の古代仏教遺跡: 飛鳥・白鳳寺院の造営と氏族』(吉川弘文館) – 著者: 小笠原 好彦 – 菱田 哲郎による書評

書評総合

『検証 奈良の古代仏教遺跡: 飛鳥・白鳳寺院の造営と氏族』(吉川弘文館) 著者:小笠原 好彦
敗者に寄り添う考古学の醍醐味
大和盆地に多くの古代寺院が競うように建立されていた。それらについてわかりやすく遺跡の特徴や建立の背景について解説したのが本書である。飛鳥寺跡や法隆寺若草伽藍(がらん)跡のほか、山田寺跡、川原寺跡、本薬師寺跡といった著名な寺院はもちろん、橿原市軽寺跡や奈良市のドドコロ廃寺といったあまり知られていない寺院も登場し、また近年の発掘調査によって注目を集めた香芝市の尼寺(にんじ)廃寺や御所市の二光寺廃寺もその成果について解説されている。それぞれの寺院について、寺院の詳細を知る手引きとなっている。奈良という土地柄もあり、飛鳥時代の宮廷を彩った王族や貴族たちの活動が寺院から垣間見えてくるのも、本書の特徴である。とくに興味深いのは、非業の死を遂げた大津皇子(おおつのみこ)に関係する寺院があることを記している点である。大津皇子は朱鳥元年(686年)の天武天皇の死後に謀反を計画したとして捕らえられ、死を命ぜられ自害した。最終的に二上山に葬られたが、その麓にある葛城市の加守廃寺で平面六角形の建物が発見されていることを、この大津皇子の菩提(ぼだい)を弔うものという説を著者は唱えている。六角形や八角形の仏堂が個人を弔う性格を持っていることからの類推である。大津皇子の墓との位置関係からも、この説が成り立つ可能性は高いと考えられる。このほか、大津皇子の姉である大来皇女(おおくのひめみこ)が建立した昌福寺の跡とされる三重県名張市の夏見廃寺から大型の塼仏(せんぶつ・仏像を浮き彫りしたタイ

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