『チューリップの文化誌』(原書房) – 著者: シーリア・フィッシャー – 駒木 令による後書き

書評総合

『チューリップの文化誌』(原書房) 著者:シーリア・フィッシャー
はるか遠い昔から人間は、とくに日本人は、植物に強い関心をいだき、愛してきました。実は食べ物として、花は愛でる対象として、幹は住宅や道具の材料として、なくてはならないものでした。そればかりか、植物は神の化身とされ、愛を伝え、欲望と争いの対象ともなってきました。植物と人間――その強いつながりを「歴史」「文化」「暮らし」などの視点から描くユニークな「花と木の図書館」シリーズの刊行が始まりました。その最初の一冊『チューリップの文化誌』の訳者あとがきを公開します。
チューリップはなぜ世界中で愛されるようになったのか
チューリップは日本人にとっても親しい「春の花」だ。寒い冬が過ぎてやわらかな陽光があたりに満ちる頃、公園や家々の花壇に色とりどりのチューリップが咲きはじめ、道行く人の目を楽しませてくれる。NHK放送文化研究所世論調査部編『日本人の好きなもの――データで読む嗜好と価値観』(日本放送出版協会/2008年)によると、花の部門でチューリップは桜に次いで堂々の2位になっている。そういえばわたしの友人に、自分の知らない花はなんでもかんでも「チューリップ」にして女子連の顰蹙(ひんしゅく)をかっている男がいた。ウケねらいのところもあったのだろうが、彼の脳内に「花といえばチューリップ」という図式ができていたのはまちがいない。それはそうだろう、おそらく大多数の人にとって――ある年代までかもしれないが――最初におぼえた花の歌は童謡の「チューリップ」であり、お絵かきの時間に書いた花の絵はチューリップだったろうから。子供時代の記憶はかく

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