『上杉謙信』(吉川弘文館) – 著者: 山田 邦明 – 本郷 和人による書評

書評総合

『上杉謙信』(吉川弘文館) 著者:山田 邦明
学問的な理解を重んじ故郷の英雄を真摯に描く
著者・山田邦明さんは、新潟県出身。私が大学で中世史を学び始めたときに大学院に進学されていて、その研究内容・研究方法・研究姿勢から多くを学んだものだ。また史料編纂(へんさん)所でもご一緒させていただいた。山田さんは書道を学ばれていたため、崩し字がとてもよく読める。古文書を読解する能力は、現役の中世史研究者中、第一ではないか。また指導にも抜群の才を示され、一枚の古文書を深く掘り下げて、若い研究者や学生が興味を持てるよう、緩急をつけた解説をされていた。そんな山田さんが故郷の英雄、上杉謙信の生涯を書いた。当然手に汗握るものに違いない、とわくわくしながら読み進めた。しかしながら読了したとき、肩すかしをされたような気になった。謙信の旺盛活発な行動の軌跡は丁寧に叙述されている。だが、ぜひ知りたいと思っていたことが取り上げられていない。謙信の軍事は略奪が目的だったとか、捕虜を取って人身売買をしたとか、生涯不犯(ふぼん)はウソで妻がいたとか、実は女性だったとか、そうした説の真偽はどうなのだろうか。さらにはそもそも、義の武将、という世に定着した評価は妥当なのか。だが、すぐに思い直した。あの才能溢れる山田さんが「書いていない」。すなわち、それが答えなのだ。2020年現在の段階で、「純粋に学問的な理解」としては、先の諸説はいまだ議論に値する水準にない。著者はそう判断している、と受け取るべきなのだ。そうか、確かにはしがきで、「義の武将」は江戸時代以降に作られたイメージと一刀両断にされていたっけ。学問に真摯に向き合

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