荒木田岳『村の日本近代史』(ちくま新書) 9点

書評総合
 なんとなく我々は、鎌倉時代以降に成立した自治的な組織である惣村が、人々の共同体として江戸時代に受け継がれ、それが明治期に行政単位として再編されていったというイメージを持っています。江戸時代には共同体としての「自然村」のようなものがあったと想定されがちです。 しかし、本書ではそうした自然村は一種の幻想であり、村というのはあくまでも支配のための「容器」であったと主張します。そして、そのことを証明するためにあくまでの支配者の目線に立ちながら、太閤検地以降の村の変遷を追っていくのです。 このように書くとなかなか硬そうな内容ですし、実際に硬い本なのですが、全体を通して非常に刺激的な議論が行われています。 私たちは権力者が制度を制定すれば、その通りに物事が運ぶと考えがちですが、そうはならなかった部分を丁寧に見ていくことで、今までとは違った歴史が立ち上がってきます。 目次は以下の通り。序章 村概念の転換第1章 村の近代化構想―織豊政権期第2章 村の変貌と多様化―幕藩体制期第3章 村の復権構想とその挫折―明治初期第4章 土地・人・民富の囲い込みと新たな村の誕生―明治中期終章 「容器」としての村 一般的に「村」というと、一定の領域があり、その中で共同生活が営まれているとイメージされます。 しかし、歴史的にみると支配者が把握しようとしたのは「人」であり、「領域」ではありませんでいた。律令制における戸籍制度や税制などを思い浮かべると、そうだったことがわかると思います。 では、村を「領域」として把握しようと考え始めたのはいつのなのか? 著者によれば、それは秀吉の太閤検地からになります。 この時代は大

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