『豚の死なない日』(白水社) – 著者: ロバート・ニュートン・ペック – 高橋 源一郎による書評

書評総合

『豚の死なない日』(白水社) 著者:ロバート・ニュートン・ペック
「もののけ姫」あるいは万人の感動
宮崎駿(みやざきはやお)の新作「もののけ姫」は当然のことながら予約をいれ、公開早々見にいった(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は1998年ごろ)。「ナウシカ」も「ラピュタ」も「トトロ」もそうやって見た。宮崎教の信者としては当然の行為であろう。予告編が終わり、「もののけ姫」がはじまるとあちこちから拍手が起こった。レース前のファンファーレが鳴るだけで拍手がわく最近のGIレースの競馬場のようだ。思わず、わたしまで拍手しそうになった。さて、もちろん「もののけ姫」はたいへん感動的であった。北の地の果てに住む若者アシタカは勇気があり、山犬に育てられた少女サンは美しく健気で、自然を代表する荒ぶる神々たちには人間と戦う理由があり、またエボシ御前を代表とする人間たちにも森を切り拓き自然を破壊する理由がある。悪も善も純度一〇〇%どころかせいぜい三〇%がいいところでジコ坊のように善悪の彼岸のような登場人物も現れ、シシ神は滅び、その結果自然は蘇るが、それは太古のそれとは異なる人間化された自然なのだというメッセージのあたりでマルクスを思い出してしまうのはわたしが古い人間だからだろうか。そういうわけで、一度映画を見たら頭にしみついてしまう主題歌をできる限りの高音を駆使して歌いながら(「♪はりつめた弓の ふるえる弦よ 月の光にざわめく おまえの心♪」)帰途についた。家に帰っても興奮さめやらず、ああいうのを万人が感動する映画というのだろうか、それにしても万人が感動するといっても中には感動しない人

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