『政治改革再考 :変貌を遂げた国家の軌跡』(新潮社) – 著者: 待鳥 聡史 – 山崎 正和による書評

書評総合

『政治改革再考 :変貌を遂げた国家の軌跡』(新潮社) 著者:待鳥 聡史
再発見されたこの国の転換
時代とは、そのなかに生きている人間には見えないものなのかもしれない。時代という生きた統一体は、そこから一定度の距離を隔てて、正確な史観と、それを育む思想を持つ人の目にしか映じないものらしい。そんなことを思わせるほど、この本は現代政治史の希有の意欲作であり、成功作になっている。著者によれば一九九〇年代以降、日本では立法、行政、金融、司法、地方自治にわたって、つまりは政治の全体にわたって大改革が進められた。この時代は長らく否定的に捉えられ、「失われた二〇年」「三〇年」と呼ばれることが多かった。とくに目立った選挙改革については、政治学者にも「熱病」にすぎなかったと切り捨て、時流に乗る一部政治家の暴走だったと矮小(わいしょう)化する風潮がある。だが著者が見るところ、この間の改革は政治の本質に及び、互いに連携する整合性を帯びて、日本社会を一つの方向へと変えるものであった。その意義は明治の憲法発布、昭和の新憲法制定にも並ぶ、日本近代化の一大前進だったと著者は声を励ますのである。著者の独自性は、多岐にわたる改革を総合的に捉える視野にあって、個別の変革の成果についてもその観点からの評価を忘れない。たとえば九四年の細川護熙政権下の選挙制度改革は、二大政党による政権交代という理想にはさほど貢献しなかった。だがこれによる小選挙区の実現は政党内の秩序を強化し、派閥の弱体化、選挙公約の党内統一を推し進めた。このことは別途の行政改革における官邸主導の強化、各官庁の権限縮小と一本化に符節を合わせている、と待鳥

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