『ランチのアッコちゃん』(双葉社)、『お望みなのは、コーヒーですか?』(岩波書店)、『都市は人類最高の発明である』(NTT出版)ほか – 速水 健朗による読書日記

書評総合
某月某日 柚木麻子『ランチのアッコちゃん』を読む。主人公は東京の麹町のビルにある出版社で働く女性派遣社員。彼女は、上司「アッコ女史」のために一週間、弁当を作る約束をする。そして、代わりにアッコ女史の「一週間のランチのコース」をプレゼントされる。アッコ女史は、月曜日から金曜日まで、曜日毎に決まった場所で昼ご飯を食べるのだ。月曜日は、古い雑居ビルの中のカレー専門店。ここは、デザイン事務所のオーナーが趣味でこっそりやっているお店である。火曜日には、ジョギングウェアとジョギングシューズを渡される。この日行くのは、有楽町に出る移動屋台のスムージー屋。皇居半周、約2・5キロのジョギング込みのランチである。これらの「おつかい」じみた毎日のランチには「陰謀」が仕込まれている。恋人にフラれて落ち込んでいた主人公は、美味しいランチによって精神的に回復するだけでなく、新たな人に出会い、また自分の得意なことを仕事に活かす主体性をも身につけることになる。本書のテーマは、食を通したコミュニケーションとそれを通した成長である。昨今、食とコミュニティという主題は、流行っていると言っていい。「一番いけないのはお腹が空いていることと、一人でいること」というのは、アニメ映画の『サマーウォーズ』のなかのセリフ。また、『食堂かたつむり』『かもめ食堂』もその類いだ。つまり、流行っているのは、食を通した共同体の回復といったものだろう。これらと『ランチのアッコちゃん』の違いは、『ランチの~』は、徹底的に都市のコミュニティに挑んでいるところにある。癒やされたいOLが、田舎の優しさに触れる話とは、つまりは逃避である。さらに言えば

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