『マザーズ』(新潮社) – 著者: 金原 ひとみ – 野崎 歓による書評

書評総合

『マザーズ』(新潮社) 著者:金原 ひとみ
女は世界の奴隷か
三人のまだ年若い母親たち。一人は、連載の原稿に追われる女性作家。夜遊びに繰り出したり、ドラッグに手を出したり、いささか素行不良ながら、二日酔いの朝もちゃんと起きて、もうすぐ二歳になる娘を保育園に送っていく。他方、仕事をもたず育児に専念する母親がいる。息子は生後約九ヵ月。そしてまた、モデルとして活躍する女性がいる。出産後も育児と仕事を両立させ、娘は三歳半になる。同じ保育園に子どもを預け、互いに知己である彼女たちは、三人ともに、子どもが生まれたがゆえの孤独にさいなまれている。夫がもっと育児に加わってくれるなら、子どもに真摯な愛情を注いでくれるなら、そして自分をもう少し思いやってくれるならという願いは叶わないまま、辛い気持ちばかりが沈殿していく。外からは幸福な母親のイメージに合致しているように見えても、当人はイメージとのギャップを噛みしめ、身体的不調に次々とさいなまれ、助けを求めてもがき続ける。ライフスタイルはまったく異なる三人なのに、その点においては見事なまでに似かよっている。そして三者ともに、夫との関係は悪化の一途を辿りつつあり、家族の絆は脆くもほどけかかっている。最先端の社会風俗を大胆に取り込みながら、その実、ほとんど古風なくらい真率な問題意識を秘めている。それがデビュー以来、金原ひとみの作品の変わらぬ特質となっているように思う(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2011年)。この世の中で、女はなぜこうであり、男はなぜこうであって、両者はなぜ絶望的なまでに隔たっているのか。そんないわばあまりに本質的な

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