『個性大国フランス』(講談社) – 著者: 塚本 一 – 鹿島 茂による書評

書評総合

『個性大国フランス』(講談社) 著者:塚本 一
ボードレールの『パリの憂愁』の中に、四人の男が自分の恋人の欠点を言い合うという話がある。三人の話を聞き終えた四人目の男が大きく溜息をついて言う、君たちの彼女は可愛いじゃないか、ぼくの彼女は最悪だ、欠点がないのだから、と。都市もこれに似ている。スイスやドイツの都市は、清潔で住民も親切だが、なぜかもう一度行きたいという気持ちが起きない。これに対してパリは欠点だらけだが、その欠点も魅力のうちで、住んでいるときはなんてひどいところだろうと文句ばかり言っているのに、帰ってきた途端、すぐにでも取って返したくなる(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は1993年)。本書にも産経新聞特派員としてパリに家族と一緒に赴任した著者が感じたパリとフランスの非能率、いい加減さ、治安の悪さなどがさんざんに書きつらねられている。評者も多少パリで暮らしたことがあるので、いちいち相槌を打ちながら読んだ。アパルトマンに入居したはいいが、いつまでも工事が終わらず、キャンプ生活をしいられたとか、未払いの税金を払いに出かけても結局払わせてもらえなかったとか、日本では想像もできない理不尽な驚きが満載されていて、苦労した著者一家には悪いが、大いに楽しませてもらった。パリでひどい目にあった人の話を聞くほど、楽しいことはない。著者も書いているように、こうした欠点にも拘らず、いや欠点があるがゆえに、パリとフランスは不思議な魅力を持っているからである。著者も、散々な目に遭いながら、最後には、なるほど、こうした生き方もあるのだな、と妙に納得してしまっているようだ。特派員らし

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