『鉄路の果てに』(マガジンハウス) – 著者: 清水 潔 – 武田 砂鉄による書評

書評総合

『鉄路の果てに』(マガジンハウス) 著者:清水 潔
父が遺した言葉胸に戦争たどる
昭和を生き抜いた父の書棚から一冊の本を抜き取ると、軍隊生活をつづったメモ用紙が貼ってあり、紙の隅に小さく「だまされた」と記されていた。表紙裏の地図には、赤いサインペンで「導線」が足されていた。「なぜ、父はシベリアに送られ、戦後も帰ってこられなかったのか……」。陸軍・鉄道聯隊(れんたい)に配属された父の生き様を病床で事細かに聞き取ることができなかった後ろめたさを抱えながら、朝鮮・旧満州・シベリアへ、赤い線をなぞる旅に出る。「鉄道と戦争は切っても切れない関係性」にある。38度線そばの臨津江(イムジンガン)に架かる鉄橋の手前には、真っ赤にさびた蒸気機関車が鎮座していた。1950年、アメリカ軍に攻撃を受け、鉄路が遮断された。父の足跡を追体験することができないという事実そのものが、戦禍を知らせた。病床で父は「ただ、ひたすら逃げ回るしかなかった」と吐き出すように言った。やがて、捕虜になった。車窓を活写し、父の残像とともに、昨今の日本社会が忘却を急ぐ加害の歴史を書き留める。父の記憶に史実を重ね合わせ、目の前に広がる光景に溶かしていく。イルクーツクを目指すボストーク号がザバイカリスクで5時間以上も停車した。国境をまたげば、線路幅が変わる。90ミリ広くなる線路幅のため、全ての車輪を交換するのだ。鉄道にまつわる「オタクな話」が随所に挟まれる。鉄道の話ならば口を割った父からの影響が、旅の手助けになった。同行者「青木センセイ」が起こすとっぴな行動が、旅を滑稽に演出する。時に、湯切りが終わって

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