『閉ざされた扉をこじ開ける 排除と貧困に抗うソーシャルアクション』(朝日新聞出版) – 著者: 稲葉 剛 – 中島 京子による書評

書評総合

『閉ざされた扉をこじ開ける 排除と貧困に抗うソーシャルアクション』(朝日新聞出版) 著者:稲葉 剛
何のために「社会」を作っているのか
2020年前半はコロナ禍と共に過ぎてしまった。「自粛要請」に応じた飲食店が店を再開できず、ライブハウスが廃業し、ファッションブティックがなくなった。職を失う。家を失う。そんな状況が、誰の身にも、突然、理不尽に起こりうるのを、毎日見ている「行動自粛」期間だった。そんな中「ステイホーム」のままならない路上生活者やネットカフェを追われた人たちのために、人の命を守るアクションを日々起こしていたのが、本書の著者だ。冒頭、言及されるのは、「東京オリンピック」を口実に、いかにして路上生活者や低所得の都営住宅暮らしの人たちが排除されていったかだ。そうした人たちは意図的に見えなくされてしまうが、消えてなくなったわけではない。生活保護費の大半を徴収しながら劣悪な居住環境しか提供しない「貧困ビジネス」の食い物にされていたりする。民間の「貧困ビジネス」と自治体の福祉事務所がつながっている実態も衝撃だ。「住まいの貧困」は、低所得の若年層、単身高齢者、障害者、LGBT、外国人などが、住まいを確保しにくい、差別的な状況にあることにも起因する。本書は差別対策の現在と、これから先目指すべき方向を具体的に訴えている。興味深い事例はいくつもある。神奈川県小田原市の生活保護担当職員が、「保護なめんな」と書いたジャンパーを着て、貧困の救済より「不正受給撲滅」に力を入れてしまったという話は、行政の歪(ゆが)みと生活保護への偏見を示す例として話題になった。本書では、小田原市がすばやく対応

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