『そして、みんなバカになった』(河出書房新社) – 著者: 橋本 治 – 武田 砂鉄による書評

書評総合

『そして、みんなバカになった』(河出書房新社) 著者:橋本 治
自分の頭で考えること 自分の実感を持つこと
昨年亡くなった橋本治のロングインタビューを複数収録した新書に、これからの社会について、「バカの最終局面に入るんだと思うんですけどね。今は、右傾化というよりも、バカになっていると言ったほうが早いと思いますけどね」とある。コロナ禍の中、テレビに連日映っている政治家を眺めながら、これが「最終局面」なのかとつぶやく。「昭和と平成の間に『バカ』という地層」があったと語る橋本だが、「これを読めば『教養』が全部つきますという本を読んでもしょうがないって、そう俺は思うのね」とも言っていた。教養とされているものを体得するよりも、あくまでも自分の実感に基づいて、思考を膨らませていくことを徹底していた。「自分であることの実感からしか入れないものなあ。だって『分かる』ということ自体、それが基本だしなあ」。だとするならば、「バカ」とは、自分の頭で考えることを諦めてしまった状態、自分の実感を他者に委ねてしまった状態ということなのか。今を生きる若者が絶望的になりやすいのは、「あんまり変わらない明日しかないよな」と思いつつ、「十年後や二十年後を見てしまうからなんでしょう」。じっくり考える前に、もうそういうことになっているんで、と知らされることが多くなった。すると、わざわざ考えることが面倒になり、いつのまにか考える行為が反抗的とされてしまう。高橋源一郎による巻末エッセーに、「社会や世界がどうしようもなくぐらついてきたとき、人びとは、『橋本さん』を発見せざるを得なかった」とある。意見が合わない、ではなく、

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