『三月の招待状』(集英社) – 著者: 角田 光代 – 阿刀田 高による書評

書評総合

『三月の招待状』(集英社) 著者:角田 光代
辛いこともあるが最後はノホホンと 
一冊の中編小説と見ることもできるが、やはり連作短編集として読むほうが適切だろう。12話からなり、一つ一つが独立した短編でありながら全体を読み通せば、それなりのまとまりがある。かつて大学で睦みあった数人の男女たち……。10年ほどが過ぎ、今は30代、恋愛もあったし結婚もあったし、敬愛もあったし侮蔑もあった。1話ごとに主人公が変わり、それぞれの生活と交友と思案とが綴られ、都会に暮らす中流の上くらいの男女の、今風のドラマが浮かびあがる。女性からの視点が多く、この作家の書き巧者ぶりが遺憾なく発揮されていて快い。冒頭で触れたように“連作短編のようで、中編のようで”というスタイルを完成するのは、小説の技法として充分にむつかしい。その典型のような味わいがあって小説教室のテキストにもよさそうだ。作品の始まりはメンバーの一組が離婚式を催す、という設定から。招待状を受けた側の当惑、離婚式の風景、そこでめぐりあった古い仲間たちが、あらたにくっついたり、しらけたり、昔日の慕情を振り切ったり、女性が主導権を握っている描写が多いのだが、――当節はこうなんだろうなあ――と納得が広がる。天下国家を語る小説ではないけれど、この世代の(特に女性の)心のひだに触れ、鮮やかにえぐり出しているところが随所に見られて、これはまちがいなく小説を読む楽しさだろう。皮肉交じりのユーモアも楽しい。“裕美子は思い出す。学生のころ、顔を合わせば恋愛の話ばかりしていた。正道に好きな

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