『日本のお弁当文化: 知恵と美意識の小宇宙』(法政大学出版局) – 著者: 権代 美重子 – 平松 洋子による書評

書評総合

『日本のお弁当文化: 知恵と美意識の小宇宙』(法政大学出版局) 著者:権代 美重子
小さな箱に日本人の精神性
一食をまかなう小さな箱。その内部に詰まっている多様な日本文化を、本書は米ひと粒見逃さぬ目配りを効かせて解き明かす。お弁当について書かれた文化論は意外に少ない。著者はホスピタリティ論を専門に研究、テーマは「日本のもてなしと食文化」だと知って合点がいった。日本人の足取りとしての食の歴史、時代や社会の諸相、それらとお弁当との接合点を探究しつつ、と同時に掘り起こすのは日本人の精神性だ。作る側/食べる側、渡す側/受け取る側、見せる側/見せられる側。お弁当がたんなる携行食の範疇(はんちゅう)を超えるのは、つねに他者が介在する存在であるからだろう。庶民の暮らしを下支えしてきた多彩なお弁当の数々。農作業の道具とともに持参した麦飯や梅干し入りのメンパ。山に長期間入るマタギが最後の糧として食べる、生米の粉で作るカネモチ。海上で危険に身をさらす漁師が携えた船弁当。戦国時代に生きた雑兵の奥の手、兵糧丸や芋茎縄(いもがらなわ)……なるほど、日本人はお弁当によって生き永らえ、しぶとく命を繋いできた側面を持つ。戦後の復興をもり立てたドカ弁によっても。そのうえで注目するのは、花見や芝居見物など遊興と結びついた江戸期のお弁当だ。花見弁当、重箱、幕の内弁当、助六弁当ほか、それぞれの出自と江戸文化や風俗との関係をこまやかに解説、庶民の喜怒哀楽を共有してゆく。駅弁の存在意義を読み解く第四章では、災害支援の要素を指摘。駅弁は被災者を助ける役目も果たしてきたという。「交通の要所である

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