『牧野信一全集〈第1巻〉大正8年8月~大正12年12月』(筑摩書房) – 著者: 牧野 信一 – 種村 季弘による書評

書評総合

『牧野信一全集〈第1巻〉大正8年8月~大正12年12月』(筑摩書房) 著者:牧野 信一
未知の顔とあいまみえるか
牧野信一の新全集が出はじめた。今月が第五回配本(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2002年)。熱心なファンのいる作家だから、第一書房の一巻本全集以来、三度目の全集になる。わたしなどは戦後の人文書院版三巻本全集を愛読してきたが、今度の筑摩書房版には初期の少年少女向き未収録作品が採録されていて、このあたりから牧野のこれまで未知の顔が発見されることになりそうだ。ギリシャや中世の騎士物語が好きだった牧野信一は、井伏鱒二や坂口安吾などの友人を集めて騎士団ごっこのようなことをしていた時期がある。そのメンバーの一人に、よく谷円三と誤植される谷丹三という作家がいた。わたしはたまたままだ焼け跡の残る新宿で、この人のハワイ人の奥さんがやっている飲み屋でご当人を見かけた。牧野信一再評価につきあって、その話を若い人の前でしたら、若い文学研究家のS君が戦前の「三田文学」から戦後の文学雑誌までを渉猟(しょうりょう)して、十数編の谷丹三作品をコピーしてきてくれた。おまけに埴谷雄高と坂口安吾の谷丹三論。これを一人で愉(たの)しんでいてはもったいない。さてどう世に出すか。S君と思案中だ。【初出メディア】朝日新聞 2002年8月4日朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。http://ww

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