『カントロヴィッチ―ある歴史家の物語』(みすず書房) – 著者: アラン・ブーロー – 山折 哲雄による書評

書評総合

『カントロヴィッチ―ある歴史家の物語』(みすず書房) 著者:アラン・ブーロー
王権論に結実した人生遍歴
王には二つの身体がある。一つは生理的に死滅する身体、もう一つが永遠に生きつづける象徴的な身体、――そういう考え方が東西古今の歴史に散見する。なぜそんな思想があらわれるようになったのか。王権の永続性を保ち、支配の正当性を主張するためである。 この王権という怪物に具わる生理と論理を、西欧中世の歴史資料を駆使してはじめて究明したのが本書の主人公、カントロヴィッチだ。そのよく知られた仕事の一つがすでに邦訳されている「国王の二つの身体」だが、最近になって「祖国のために死ぬこと」も日本語になった。その精緻(せいち)にして鋭い問題提起は定評があるが、この傑出した歴史家にむける人間形成を学説や思想とリンクさせつつ明らかにし、あわせて深刻をきわめる現代史の一断面を切り取ってみせたのが本書である。 著書のアラン・ブーローはパリ社会科学高等研究院の歴史学教授。たいして本書の主題となるカントロヴィッチは、ポーランド生まれのユダヤ人。やがてフランクフルト大学の歴史学の教授になるが、ヒトラーの政権獲得とともにイギリスをへてアメリカに亡命。一時カリフォルニア大学に就職するが、そこにも長居はできない。最後はプリンストンの高等研究所に移って大著「国王の二つの身体」を仕上げ、一九六三年に死去している。 ユダヤ人、亡命、アイデンティティの危機、独創的な知的探求、……と並べていけば一つのイメージができあがるだろう。その孤独と抑圧のなかに放りだされた歴史家の人生遍歴が、国家とか祖国とかい

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