『ラテンアメリカ主義のレトリック』(エディマン) – 著者: 柳原 孝敦 – 野谷 文昭による書評

書評総合

『ラテンアメリカ主義のレトリック』(エディマン) 著者:柳原 孝敦
ラテンアメリカ主義というタームを日本では加茂雄三のような歴史研究者が、確か1970年代頃に盛んに使い出したという記憶がある。加茂の場合、シモン・ボリーバルの統合思想をその先駆と見なし、根底に反米主義を孕むそれをボリーバル主義と呼んでいる。国際関係論や国際社会学の専門家を集めての研究会に首を突っ込んでいた頃、評者もラテンアメリカの統合運動について書くことを求められ、アプラやマリアテギを素材にしながら論文を書いたことがある。また、当時日本で刊行された、ヨーロッパの1920年代や1930年代の文化および思想について論じたいくつかの著作に刺激を受け、ラテンアメリカの作家たちの動向に共通する要素として認められる、地域ナショナリズムとしてのラテンアメリカ主義について考察したこともある。もちろんそこでも反米主義や精神主義は必須の要素として欠くことができない。本書を読みながら、絶えず既視感に襲われたのは、評者にそうした作業の経験があるからだろう。本書の著者の柳原氏はプロローグで、カルペンティエールの描くニューヨークとホセ・マルティの描く同じ都市をだぶらせ、まずそこに反ニューヨークの言説を見出す。さらにそれを反合衆国、汎ラテンアメリカの言説へと拡大することにより、ラテンアメリカ主義の言説という概念を抽出する。そして主に文学的テキストを通じて、この言説が生成されるプロセスの叙述を試みる。したがって、そのスケールは大きく、脇道にも果敢に踏み込んでいく。たとえば同時代のヨーロッパを語った部分などがその脇道であり、このような迂回を含む

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