『オリエント急行戦線異状なし』(DHC) – 著者: マグナス ミルズ – 豊崎 由美による書評

書評総合

『オリエント急行戦線異状なし』(DHC) 著者:マグナス ミルズ
フェンス職人トリオが、農場に最新式フェンスを張りに行く→昼はのらくら働き、夜はパブでビールを飲む→何かの拍子で依頼主が死ぬ→「ま、いいか」と埋めてしまう→また別の農場に行く→昼は……。この繰り返しが描かれているだけなのに麻薬的なまでに面白いのが、三年前に邦訳されたマグナス・ミルズの『フェンス』だった。単語やフレーズ、シチュエーションを繰り返すことで、そこに描かれている感情や行為を強調し、「文章には変化を持たせるべきで、同じことを二度語る時は別の言い方にせよ」といった、いわゆる学校の作文で習う美文の法則を無視することで、異化やパロディを生じさせる働きもある“反復”。その蠱惑(こわく)的なテクニックで、読者をイカせてくれる小説だったのである。そんな風変わりな傑作でデビューを果たしたミルズの長編二作目が、この『オリエント急行戦線異状なし』だ。アガサ・クリスティのミステリーと、エリッヒ・マリア・レマルクの反戦小説のタイトルを合体させた、題名からして人を喰った作り。内容はといえば、これがまた、何といおうか、いつかどこかで食べたことがある味で、その料理名も思い出せるんだけど、「××に似てる」と口に出した途端に「でも、なんか違う」と違和感がわき上がってくる、そんな奇妙な味に仕上がっているのだ。物語の舞台はイギリスの湖畔地帯で、避暑地として人気のある村。夏も終わりにさしかかり、キャンプ地からは一斉にバカ

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