『初期散文集』(Planeta Pub Corp) – 著者: Paz, Octavio – 野谷 文昭による解説

書評総合

『Primeras Letras:』(Planeta Pub Corp) 著者:Paz, Octavio
オクタビオ・パスは、ボルヘス追悼の文の中で、このアルゼンチンの詩人がきちんと自己評価できていなかったと書いていたが、その言葉は当然ながらパス自身にはね返ってくる。もちろん彼はそれを承知でボルヘスを批評しているわけで、このきっぷのよさ、いさぎよさが彼の一つの魅力になっている。それは自らの美学とモラルに対する揺るぎのない信頼から生まれるものなのだろうが、ぼくは以前から彼のこの美学とモラルが一体いつできあがったのかを知りたいと思っていた。だが彼は、処女詩集『野生の月』(一九三三)やスペイン戦争をモチーフにした『彼らを通すな!』(一九三七)を後のアンソロジーには入れないことでも分かるように、これまで若書きや自分の批評が認めない作品を本にすることは避けてきた。ことに散文の場合、『孤独の迷宮』によって衝撃的なデビューをする以前のものは、『木に倚りて魚を求む』(一九五七)に収録されたわずか数篇をのぞき、我々の目に触れる機会はほとんどなかった。パスのバイオグラフィーには彼が一九三〇年代末から四〇年代初めにかけて関わっていた『工房』や『蕩児』といった名前が出てくる。それらのいくつかは現在復刻版が出ているので、当時の彼の活動状況を断片的に知ることはできる。だが不十分であることはいうまでもない。詩の方は十四歳のときに書き始めているようだが、散文の発表は一九三一年、名門、サン・イルデフォンソ国立予備校入学とともに始まる。パス、十七歳のときである。メキシコの一九三〇年代から四〇年代といえば、壁画運

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